コミュニティマーケティングの現在地とは?学び、つながり、実践へ。
Community park 2026 開催レポート【前編】



この記事でわかること
● コミュニティマーケティングが今、注目されている理由
● Community parkで語られた、実践者たちの共通テーマ
● コミュニティがブランドや事業にもたらす価値



◆コミュニティマーケティングの現在地とは?

「コミュニティマーケティングが重要だ」
 そんな言葉を耳にする機会は、この数年で一気に増えました。
広告やキャンペーンだけでは、顧客との関係を築き続けることが難しくなるなか、多くの企業が「ファンとの継続的なつながり」に目を向け始めています。

一方、現場では「何から始めればよいのか」「立ち上げた後、何を成果として見ればよいのか」という迷いもあります。コミュニティは、つくること自体が目的ではありません。顧客とどのような関係を育て、その関係をブランドや事業へどうつなげるかが問われます。
2026年6月、コンテンツ東京内ファンコミュニティマーケティングEXPOで開催された「Community park」では、企業や実践者が、コミュニティづくりの考え方や試行錯誤を共有しました。

本記事では、Community parkで行われたセッションを振り返りながら、
いまコミュニティマーケティングはどこまで進み、これからどこへ向かうのか
その現在地を読み解いていきます。


◆なぜ今、コミュニティマーケティングなのか

企業と顧客のコミュニケーションは、この10年で大きく変わりました。
SNSの普及によって、ブランドについて語る主体は企業だけではなくなりました。商品のレビューや日々の投稿を通じて、生活者自身の体験が次の人へ広がっています。
そのなかで企業が向き合い始めたのが、一度の情報接触ではなく、顧客との関係をどう継続していくかという問いです。商品を購入してもらって終わるのではなく、その後もブランドとつながり、顧客同士でも体験や意見を共有できる場として、コミュニティが注目されています。

企業が目指すものは、単に「商品を売ること」から、「選ばれ続け、愛されるブランドを育てること」へ。
こうした変化を背景に、コミュニティマーケティングへの関心が広がっています。

Community parkの基調となったセッション『コミュニティマーケティングの現在地』では、従来の一方通行型のマーケティングでは成果につながりにくくなっている背景として、顧客理解そのものの変化が取り上げられました。
企業がコミュニティマーケティングに取り組む理由に加え、導入や運営で直面する課題、失敗のパターン、AI時代における役割まで、基礎から実践へとつながる論点が提示されました。コミュニティマーケティングは、一部の先進企業による特殊な施策から、顧客との関係そのものを考えるテーマへ広がり、マーケティングやブランドづくりの根幹に関わる考え方になりつつあります。
 


◆Community parkから見えた、コミュニティマーケティングの現在地

Community parkでは、3日間にわたり、多様な業界・テーマのセッションが行われました。
それぞれの議論を振り返っていくと、コミュニティマーケティングの現在地を読み解く、いくつかの共通した視点が見えてきます。

ここでは、Community parkで語られた内容を、前後編を通じて4つのテーマに分けて紹介します。
 


1.コミュニティマーケティングは「手法」ではなく「考え方」になった

コミュニティマーケティングという言葉から、会員制サイトの開設やSNSグループの運営、ファンイベントの開催といった具体的な施策を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし、Community parkで語られていたのは、単に「コミュニティをつくる方法」だけではありませんでした。
その根底にあったのは、企業が「顧客をどのように捉え、どのような関係を築いていくか」という、より本質的な問いです。

商品や情報を企業から届け、反応を得るだけではなく、顧客の声を聞き、顧客同士の関係にも目を向けながら、長期的なつながりを育てていく。
コミュニティマーケティングとは、何か新しい施策を1つ追加することではなく、これまでの顧客との向き合い方を見直すことなのかもしれません。
AIによるコンテンツや広告制作の効率化が進むほど、人と人との間に生まれる関係性の価値は高まっていく。
Community parkの議論からは、そんな時代の変化も見えてきました。

『コミュニティマーケティングの現在地 ― 事例から学ぶ、脱 "一方通行"マーケティング』
(一社)コミュニティマーケティング推進協会 代表理事 小島 英揮 氏
(株)Asobica 取締役副社長 小父内 信也 氏
コミューン(株) 執行役員CMO/CPO 杉山 信弘 氏


2. 「売る」より先に、関係を育てる

コミュニティを事業活動として続ける以上、売上や集客との関係は避けて通れません。一方、成果を急ぐあまり参加者を最初から販売対象として捉えると、継続的な関係はつくりにくくなります。
Community parkでは、「売ろうとしないこと」が結果的に売上へつながるという、一見すると矛盾するような考え方が取り上げられました。
セッション『コミュニティは境界線を溶かせるのか?』では、「コミュニティで売らないから売上につながる」というテーマが掲げられ、SNSで話題となった商品の事例や失敗談が紹介されました。
ここで変わるのは、売上の重要性ではなく、売上が生まれるまでの順番です。購入を最初の目的にせず、相手を理解し、関係を育てた先に成果を置くという考え方です。

また、コミュニティの価値は、必ずしも参加人数の多さだけで決まるものではありません。『綺麗事なし!規模を問わず独自の魅力でコアファンを囲い込む方法』では、大規模化を前提にせず、少人数のコアファンによるUGCを本業の集客へつなげる取り組みが紹介されました。
ここで見るべきなのは、参加人数だけではありません。ブランドについて自ら語る人がいるか、参加者同士にどのような関係が生まれているか。コミュニティの目的によって、追うべき成果も変わります。

『コミュニティは境界線を溶かせるのか?』
(株)7c 代表取締役 兼平 愛子 氏
La SEA 代表 小熊 由香 氏
(一社)薩摩BASE 代表理事 新地 貴浩 氏


『綺麗事なし!規模を問わず独自の魅力でコアファンを囲い込む方法』
(同)DMM.com オンラインサロン事業部 法人営業部 マネージャー 松井 秀樹氏
大井川鐵道(株) 代表取締役社長 鳥塚 亮 氏
山口インフルエンサー事務所 growth 代表 沼 良枝 氏
(株)Acre 執行役員/山口インフルエンサー事務所 growth 古重 満太郎 氏


3. コミュニティは、ブランド戦略・経営戦略になっている

Community parkでは、コミュニティの立ち上げ方や運営方法に加え、ブランドや事業との関係も扱われました。
エンターテインメント、IP、小売、EC。異なる業界の事例から共通して見えてきたのは、コミュニティが顧客との接点の一つにとどまらず、ブランドや事業のあり方にも関わり始めていることです。
 

ファンは、顧客であると同時に発信者になる

エンターテインメント業界をテーマにしたセッションでは、熱量の高いファンとの関係が、事業やブランドにどうつながるかが扱われました。継続的に応援するファンは、商品やコンテンツを購入するだけでなく、自らの体験を語り、次のファンとの接点をつくる存在でもあります。
「たまごっちのプチプチおみせっち」を題材にしたセッションでは、ユーザーがX上で体験を発信し、情報の広がりをつくるコミュニティ戦略が紹介されました。企業から情報を届けるだけでなく、ファンが世界観に参加し、自分の言葉で語りたくなる体験をどう設計するかが論点となりました。
二つのセッションに共通するのは、ファンを情報の受け手だけにしないことです。コミュニティは、企業が情報を届ける場であると同時に、ファン自身の言葉が生まれ、次の人へ広がる接点にもなっています。

『エンタメの現場から考えるファンコミュニティマーケティングの今と未来』
(株)ユートニック 代表取締役 常田 俊太郎 氏
(株)アミューズ 財務統括部コーポレートデベロップメント室 CVC投資担当(室長)/(株)アミューズスポーツエージェンシー 取締役 中野 健太 氏
ParadeAll(株) 代表取締役/ (一社)日本音楽著作権協会(JASRAC) 理事 鈴木 貴歩 氏


『「たまごっちのプチプチおみせっち」から学ぶ!コミュニティ戦略』
(株)フラッグ 代表取締役 久保 浩章 氏
X Corp. Japan (株) Global Content Partnerships Partner Manager Anime, Manga & Music 髙田 博太 氏

開催時の様子

コミュニティを、事業と顧客体験の中で捉える

コミュニティと事業との関係を具体的な数字で示したのが、カインズの事例です。

同社が運営する14万人規模のコミュニティについて、会員の購入金額が非会員の1.8倍となり、年間約6億円の売上拡大につながったことが紹介されました。また、5年間の取り組みを通じて、コミュニティをファンとの共創やLTV向上、リテールメディア活用へ広げてきたプロセスも扱われました。
この事例から確認できるのは、コミュニティ参加と購買行動に関係が見られることです。ただし、参加が購入額を直接高めたかどうかは、この数字だけでは判断できません。コミュニティの成果を、参加人数や投稿数だけでなく、事業との関係から捉える必要があります。

ニューバランスジャパンとヤプリのセッションでは、ブランドECにおける「体験設計」がテーマとなりました。EC、店舗、アプリ、SNS、イベントなどの接点を個別に増やすのではなく、自社の強みを軸に、一貫した顧客体験をどう設計するかが議論されました。
コミュニティも、ほかの顧客接点から切り離して考えるものではありません。顧客の声を聞き、そこで得た理解を商品や体験へ戻していく。二つのセッションから、コミュニティや顧客接点を、ブランドや事業全体の中で捉える視点が見えてきます。

『ファンマーケティングと経営戦略の関係性を考える
カインズの「くらしDIY」戦略とファンマーケティングの関係性・インパクト』
(株)Asobica VP of Strategy 事業推進室 室長 佐藤 頌太 氏
(株)カインズ マーケティング本部 面白事業部 コミュニティプラットフォーム部
DIYコミュニティG グループマネジャー 澁谷 慶子 氏


『ブランドECにおける「体験設計」の再定義』
(株)ヤプリ 執行役員CCO 金子 洋平 氏
(株)ニューバランスジャパン Sr Manager of Ecommerce Division 牧嶋 琢実 氏
 


前編では、コミュニティマーケティングが、顧客との向き合い方からブランド・事業戦略へ広がっている変化を見てきました。

後編では、企業とファンが一緒にブランドを育てる「共創」と、セッションで得た学びが相談や対話へつながった展示会場の様子を取り上げます。
Community park 2026 開催レポート【後編】をお楽しみに!


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